緑の魔法使いT
[過去](1/3)

私は夢を見ていた。
うろ覚えになっていた思い出したくない昔の記憶の夢。
忘れちゃいけないことでいつかきっと必要な記憶だけれど…。
出来ればもう少し思い出したくなかった。
それは私がルリ=カトレットになる前の夢───。


約10年前。
私はヴィオルの町よりも小さい町の外れにある森で両親と暮らしていた。
母が森の管理人でとても美しい森だった。
私たちは緑のある環境がなくては生きていけないと小さいながら思ったのを覚えている。
不便なことはたくさんあったけど、何一つ苦ではなかった。
母は魔法使いで父は武器使いだった。
母は優しくて料理が上手く、父は強くてたくさん遊んでくれた。
幸せでいっぱいだった。
そんなある日、絶望と別れは突然やって来た。
いつものように3人で楽しく夕飯を食べていた晩のこと。
夕飯を食べ終えた私は、その時まだ子馬だったハクにエサをやりに外へ出ていた。
母にハクの世話は全て私がするように言われ、暇さえあればハクとずっと一緒だった。
その日もいつも通りハクが人参を食べているのを私は眺めていた。
その時、家の扉を蹴破る凄まじい音が森中に響き渡る。
何が起きたか分からず、私はしばらくその場から動くことが出来なかった。
とにかく今は家の中に入ってはいけない気がした。
こっそり影から覗き込むと、立派な服を着た男の人たちが外にたくさんいた。
みんな同じ服装で、何かの集団なのは分かった。
家の中からは家具や食器が床に落ちる音がずっと聞こえている。
私は息を殺してハクとじっとしていた。
『……リ……ルリ!!』
母からテレパシーが送られて来る。
『お母さん!!』
私は心の中で必死に叫ぶ。
この時はまだ魔法能力はなかったが、こうすれば声が届くと教えられていた。
『ルリ…。ハクと一緒に逃げなさい』
思っていた通りの答えが返ってきた。
今母と父の元へ行ってはいけない。
私が行ったところで両親を困らせるだけ。
『でっ、でもどこへ!?』
『ここからずっと真っすぐ西に向かうのよ。ヴィオルの森にたどり着くわ』
『ヴィオルの…森』
そんな森の名前聞いたことがない。
『そこの管理人ならきっと力になってくれるから』
『お母さんたちは……?』
『私たちは大丈夫だから…』
『嘘っ!!』
いくら小さい私でもそれくらい分かる。
『ルリ…お願い…逃げて生きて』
『お母さんっ!!』
そこで母の声は途切れた。
あの人たちに見つかる訳にはいかない。
私は涙をこらえてハクに乗り、ひたすら西を目指した。
どのくらい離れているかも分からないヴィオルの森を目指して―――。

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